「非日常」ふたり旅のすすめ
お弁当の日、すみれ組と西山公園にいきました。越前武生駅のホームに入って来たのは新しい電車!オレンジ色のふくよかで、つややかな「フクラム」です。車内は静かで快適。「つぎは西鯖江…」アナウンスで、何人か座席から腰を浮かせています。降りるのは次の「西山公園」ですが、「にし」という音に反応したのです。〈おうちのクルマは寝ていても「ついたよ」って起こしてくれるけど、にしやまこうえん駅で降りないと、電車はすぐ発車して、福井までいってしまう…〉ちょっとだけ、脅かしていたのです。「バイバ~イ!」運転士さんに切符を渡して、さっそうと西山公園に。さあ、遊ぶぞ。走るぞ。登るぞぉ。
レッサーパンダの飼育員さんのお話を聞いたあとは山上の展望台に向かいます。いくぞ!園長先生と競争だ!最後尾から坂道ダッシュをかけました。みんなを次々と追い抜いて、私が先頭に。オトナげなくてすみません。前方に長い物体、おや?あれは何?路上にヘビが、じっとしています。「シマヘビだから、怖くはないよ」好奇心旺盛なコウタくん、人差し指で、ツン! 「うわっ!動いた!」コウタくん、びっくりして跳び下がりました。お昼寝を邪魔された?ヘビくんは、茂みに入っていきました。みんなのおなかもペッコペコ。お弁当もおいしくいただきました。遊具で遊んで、そろそろ帰ろう…。水筒が空っぽになる子が続出。急きょ自販機で水を買ってきて補充しました。「んー!冷たくて、おいしい!」。帰りの電車は小さくて、結構、揺れます。「おもしろいな」コトン、コトン…みんなも一緒に身体を揺らして大喜び。遊園地の乗り物みたいだね…。
こんな、ほんの数時間の「旅」でも、けっこうな発見や感動があります。おうちでも、いっぱい土産話を聞けたのではないでしょうか。旅の醍醐味は小さなハプニング。順調で快適すぎる旅はつまらない、そう思います。
長男が二歳半のとき、ふたりで京都の梅小路機関車館に行きました。帰りの特急の車内で「トイレいってくるから、待っていて、すぐ戻るから、だいじょうぶ?」「うん!」私が座席を離れたのは二分間ぐらいなのに、戻ったら「ウエーン!パパ~!パパがいないよぉ~!」大泣きしていました。前の席の中学生ぐらいの男の子とお父さんが、なだめてくれています。「すみませんでした」謝る私に「いや、だいじょうぶですよ、なつかしいです」「お前もあんなときがあったんだよな」って息子さんに話しています。
幼い長男は彼なりに父親との二人旅、頑張っていたのか、と、愛おしく感じました。同時に、うちも、いつかあんなふうに息子と話すときがくるのかな…。漠然とした目標みたいなものが見えました。
日常生活は惰性で、それなりに流れていきます。お父さんはフツーにお父さんをすればいい、お母さんはフツーにお母さんをすればいい。でも、旅は「非日常」。小さなトラブルや事件が起きても、逃げ場がない二人だけの旅は、親子や夫婦であっても一対一の関係を露わにします。成田離婚というのもありますね。。
はじめのうちは妻に「えーっ!また勝手に」とよく怒られましたが、そのうちy次男、三男も平等に、それぞれ興味がある場所に一人ずつ、私と二人で出かけるという流れができました。大小あわせると十数回は出たと思います。その度に残ってふたりを見てもらった妻には、申し訳ないと思います。もちろん家族みんなで旅行にも出かけましたが、いつかはゆったり、夫婦でふたり旅をしようと…その頃には「いいわ、面倒くさいから」って言われるかも。
家では私、受けない冗談ばかり飛ばしている、いい加減なお父さんです。息子たちは大学生、高校生、中学生。みんな口数が少なくなり、親が10言っても3か2か1しか返ってきません。打てば響いた、あの頃がなつかしいです。ただ、今でも息子たち、日野山登山に誘うとついてきます。オヤジと小さな冒険は、嫌いじゃないみたいです。