そこに山がある、やろ。

あっ、えんちょうせんせい、帰ってきた!」雪の旭川の出張から戻ってきた私を見つけたひまわり組の女の子。「自動車で?お船で?どうやって帰ってきたの?」飛行機だよ。「菊人形のヒコーキでか?」うーん、それもいいけど、ぐるぐる回るんじゃなくて、もっと大きくて速いヤツね。かわいいですね。

すみれ組の親子と鬼ケ岳に登ってきました。標高は533mと決して高くはありません。手ごろなハイキングの山ですが、経験がない親子にとっては壁のように思えたかもしれません。はじめは平坦な道。男の子たちは先頭争いするぐらいハリキッテいたのに、次第に坂がきつくなり、岩場にさしかかると「もういや」「むり…」弱音が出てきました。中間地点の休憩所まで来ると、ひとり、ふたりと泣きべそクンが出現。涙は伝染するんですねぇ。「もう、かえるっ!」「帰られんって、いくしかないんや!」「みんな待っていてくれるんやぞ」。親子の対決が登山道のあちらこちらで見られました。

そんな中、「よいしょ、よいしょ」マイペースで登ってきた子が到着。「みてー!すごいねぇ、たかいねぇ」涼しい顔で、景色を楽しむ余裕があります。山登りにはダッシュは無用。一定のペースで歩き続けるのがバテないコツなのです。プライドをくすぐられたか、泣いていた子も持ち直し始めました。もし単独の親子で登っていたら、引き返していた?おんぶしていた?かもしれません。

やれば、できる。私は確信していました。8年前、近所の仲間と白山に登ったことがあります。うちの長男は小学校の3年生。メンバーにはすみれ組の男の子も入っていました。少し心配していましたが、歩き出して1時間ほどしたとき、お父さんが「だいじょうぶ?」声をかけました。当時、お父さんはあまり子育てに携わっていなくて自信がなかったのですね。とたんに彼は甘えた表情になり、抱っこされて、後ろに下がりかけます。そんなぁ、この子、まだまだがんばれるよ…そう思った私は「いけるいける、さっ、いこうっ!」先を歩く息子のところに彼を押し出しました。二人が先頭に立つと様子は一変。アニキとオトウトのように、タッタ、タッタと息一つ乱すことなく軽快に登りはじめました。「お父さん、もう、おそいよ!」と、大人たちのはるか先で腰掛けています。5歳児は、みごと標高2702メートルの白山御前峰に登頂、日帰りで往復14キロを8時間で踏破したのです。彼は今、中学生になっています。今度、駅伝の全国大会に出るそうですよ。

のるかそるかの勝負!大げさですが、慌しい毎日、親子が真剣に向き合うときなんて、めったにありません。ライバルでもある友達のがんばりを意識しながらの何千歩もの登りという非日常の場面。親子にとってとっても貴重な葛藤の時間でした、子どもたちには大きなステップになったことでしょう。

「機縁熟して」といいます。機(タイミング)と縁(過程)。子どもには伸びようとする瞬間があります。見逃さないためには、親子でしっかり歩んでいる必要がありますね。力を引き出すか、引っ込めてしまうかは親の覚悟次第。おそらく、親子スキー体験でも同じような光景がみられることでしょう。

私は週に一回、日野山に登っている自称「ヒノラー」です。「どうせ下りるのになんで山に登るの?」最初の頃は妻によく言われました。「そこにエベレスト(山)があるから」といったのは登山家のマロリーですが、理由は登った人にしかわかりません。たまに高校生の長男や次男もついてきます。山は互いの心を開いてくれるし、運動不足も解消するし、いいことづくめなんです。「ほら、そこに日野山が、あるやろ」です。そういえば、今回の鬼ケ岳登山で2キロも体重を落としたお母さんもいたそうですよ。とにかく、皆さんおつかれさまでした。

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