キャッチボール
日曜日、法事から帰ったら長男が庭で塀にボール投げをしています。今は高校の弓道部。ボールを投げている姿は五年ほど見ていません。めずらしいな…と、部屋から眺めていたら、私を見つけて、「やろっ!」と投げるポーズ。「マジか!」お父さんは有頂天!衣をたたむのももどかしく、短パンにシャツ一枚で外に飛び出しました。ああ、息子とキャッチボールなんて何年ぶりだろう。「さあ、こい!」シューッ!ドスン!「おおっ!」17歳の高校生が投げるボールは速く、重く、球筋が安定して、確実に胸のあたりに収まります。下半身を鍛えているからでしょうか。少年野球チームに入った頃、ストライクが入らなくて泣きながら投げていたっけ…。
ビシッ!ビシッ!小気味よい音に、お向かいの家のご夫婦も出てきて「あら久しぶりやね~」って眺めています。薄暗くなってきたのであと10球!ホンキ球です。やばい、見えない…平気なフリをして辛うじて父の威厳を保ちました。グローブをつけた左手がジンジンしびれましたが、チョットうれしい余韻でした。
私が子どもの頃はなんといっても野球が一番人気。休みの日は必ず父とキャッチボール。「はい、ここ!」父が構えたグローブ目がけて思いっきり投げます。なかなかうまくいきませんが、たまにスパッと入ると「よっしゃ、ナイスボール!」うれしかったです。中学三年になって「ひゃあ、さすがにもう相手できんな」と父が降参しました。笑顔でした。
小学生のときは友達と本山の境内で野球をしました。鐘楼の前あたりがホームベースで銀杏の木が一塁…。ドラエもんでやっているような野球ごっこですね。私は「のび太くん」的な存在でしたが、遊び場の子ということで、「光真ちゃんには速く投げたらあかんで」ガキ大将のDちやんの号令で、ゆるい打ちやすい球を投げてもらっていたような…とにかく皆と遊ぶのが楽しかったです。
今の子たちはどうでしょう。もちろん、スポ少に入ったら野球をやりますが、空き地や境内で「野球ごっこ」をしている姿はまったく見かけません。二極分化が進んで、結果的にキャッチボールができないお父さんが増えていくことになりませんか。言葉のキャッチボールができる若者も減っている気がします。
キャッチボールには相手への思いやりが不可欠。取りやすいように相手の胸のあたりを目がけて投げます。もし球がそれたら相手がボールを取りに走らないといけません。投げたほうは「ごめんごめん!」「わるいわるい!」って謝ります。ボールには自分の心を乗せるんです。たかがキャッチボール、されどキャッチボール。長男はもうすぐ大人になります。父から私、私から息子へ。秋の夕暮れのひととき、「キャッチボール」という、ささやかな財産が受け継がれたことを、実感しました。
まさかの三週連続の台風接近に、振り回された10月でした。「28」号なんて数の台風、あまり記憶にありません。半そでで菊人形に行ったのもはじめて。最高気温が25℃を超えた夏日が12日もありました。今週に入ってやっと、秋らしい天候に落ち着いた感じですね。
3歳児と越前の里までお散歩に行きました。木々の葉が色づきはじめていました。おじさんたちが雪つりの作業中。「園長先生、こっち来て!」「あっちいこう!」あっちこっちに引っ張られながら、苑内を散策。いろんな形のドングリ。キノコの群生…。深まる秋を満喫しました。子どもたちのおかげで、園長は日々こうしてお仕事をさせてもらっています。