あのぉ 3年抱っこし放題って…
夕方の園庭が好きです。「遊ぶ!」お迎えがきて、玄関を出た子は大抵、左側に駆け出します。みんな園庭で遊ぶのが楽しみなのです。「お買い物いかなあかんのやって、ちょっとだけやで!」ってお母さんの声、聞こえているのかな。
「かーわって」ブランコの順番を待つ子たち。手押しポンプをガチャガチャ、アスレチックで鬼ごっこ、砂と草でお料理…。小学生も園児も、楽しんでいます。お母さんたちは、ベンチに座ってお便り帳を読んだり、わが子が遊ぶ姿を眺めたり、ママ同士のお喋りの花もたくさん咲いています。ここだけは、時間がゆったり流れています。「あら、もうこんな時間!おーい、帰るよ~」
直前まで職場で働いていたお母さんたち。このあと家に帰れば妻であり嫁ですから、台所に立つのでしょう。保育園の園庭は職場と家庭の間のちょっとしたアクセント。忙しいお母さんたちにとっては、「心を切り替える」といっては大げさですが、それなりに意味がある時間、空間なのではないでしょうか。がんばっているお母さんたち、疲れていても輝いていますよ。
「3年間抱っこし放題」のフレーズで、安倍総理が育児休業3年取得を目標に掲げました。ただ、現状でも男性の育児休業の取得率は2.6%にすぎません。結局、女性が家に戻るしかない。子どもが可愛くない母親はいませんが、子育ては一人で抱えるものではありません。私たちから言わせれば、安倍さんは現実がわかっていないか、お母さんは家事育児をテキパキこなす優しい人…という、頑固な理想があるかのどちらかです。
うちはお寺なので妻は「抱っこし放題」でした。二歳違いで3人の男の子。宴会があって夜遅く帰ると部屋は台風のあとみたい。食卓は食べたまま、玩具や絵本、お菓子が散乱して足の置き場もありません。疲れ果てた妻が普段着のまま、ベッドに倒れこむように子どもたちと眠っています。上の子たちは言うこと聞かない、寝ない、三男は泣き止まない…あの頃は気がヘンになりそうだったといいます。部屋は私が片付けていましたが、B型の私のアバウトな「お手伝い」が輪を掛けてA型の妻のストレスになっていたらしく「あーっ、思い出しただけで腹が立つわ!」12年たってもまだ怒ってるみたい。お母さんは観音様になりなさい、なんてムリだと思います。人間だもの。
今年度に入って市役所がある基準を厳格に適用して、波紋を呼んでいます。「お母さんが家にいるなら上の子もいっしょに見られるでしょう」という理屈で、下の子のために育児休業を取得すると半年を過ぎたら上の子(未満児)が退園になります。基準は基準として、やわらかに対応していただきたいのです。子育てを「孤育て」にしない。保育園の大切な使命です。
母親はこうあるべき、家庭はこうあるべき。教育は…。景気も上向き、政治の調子がいいのはわかりますが、おじさん的「べき」論が次々とアタマをもたげてきて、少し息苦しさを感じます。先日、中高校生の息子たちと映画館に『図書館戦争』をみにいきました。「知る権利・表現の自由」と「正義・正論」の闘いです。アクションありラブコメありで、結構おもしろかったです。そこで印象に残ったセリフをひとつ。「正論は正しい。でも正論を武器にするヤツは正しくない」隊長役の岡田准一、かっこよかったです。