120円のボーケン

ことん、ことん、たたん、たたん…

田んぼの中の線路を、一両だけの電車が走ります。少し開けた窓から、心地よい風、初夏の匂いがしてきます。ウトウトしながら、村国、塚町、北村を過ぎて、プ~ンとセロファン工場の硫黄の臭いがしてくると五分市駅に到着…。もう30年前のことです。

私が高校生のときまで武生駅と粟田部の間を走っていた南越線。小学生の頃には、たくさんのお客さんが利用していました。菊人形遠足では二両編成。450人の小学生を詰め込みました。「うわーっ、押すな~」私たちはこの田舎にして、年に一度は満員電車を経験していたのです。自家用車の急速な普及でお客さんは激減。数人しか乗らない小さな電車がけなげに走っていましたが、56豪雪のあと、ついに廃止になりました。

今や福井鉄道の唯一の路線になったのが武生と福井を結ぶ福武線。例年、すみれ組が電車で西山公園に行きます。武生新駅は越前武生に名前が変わり、職員も若い人ばかり。お客さんも増えています。一人ずつ、自動販売機で切符を買います。お金をいれて、「ここ?」《こども》と《行き先》、二つのボタンを押します。「できた~!」満面の笑顔で戻っていく子。おーい!切符~!肝心の切符を取らないといけませんよ。なにしろ、半数以上の子が電車に乗るのが初めてなのです。

「はやーい、はや~い」「すご~い」自動車と大差ない速度ですが、ゴトンゴトン揺れる電車、両側に流れる景色、迫力があります。みんな、おおはしゃぎです。「あ、あっちから電車きた」単線ですから、途中の駅ですれ違い。「ここで交代するんや!」「プラレールといっしょやな」鉄橋を渡るとまた歓声。鉄道の橋には柵がありませんから、空を飛んでいるように見えます。そろそろ降りる駅が気になりはじめました。6個目が西山公園やで…ピンポーン♪まもなくサンドーム西…そわそわ立ちあがる子「まだやで!」「もうつくよ」全員、表示板に目が釘付け。こんな真剣な表情、久しぶりに見ました。

西山公園駅は昔、下鯖江といいました。幼いころ、家族連れでつつじ祭りに来た思い出の駅です。駅舎が新しくなり、レッサーパンダのイラストが描かれています。自然にみんなが記念撮影の位置に。はい、撮るよ~!とっても短い電車の旅でしたが、ワクワクドキドキ、いい体験ができました。西山公園でいっぱい遊んで、その日はおうちで早く寝たのではないでしょうか。

いま何番目の駅?ほかのお客さんの迷惑にならないように、次はこっちのドアがあくよ、切符なくしたらあかんよ…子どもたちのかわいい頭脳はフル回転していたことでしょう。移動する我が家といってもいい自家用車で、ピコピコとDSしていて「おい、ついたよ~」「どこに~?」というのとは刺激が全然、違いますね。たったの130円です。電車の旅、いいでしょう。

月曜日、敦賀で会合がありました。帰りに乗り込んだ普通電車が発車時刻を過ぎても動きません。後からくるサンダーバードが強風で大幅に遅れているのです。アナウンスでは40分待ち。楽しそうにおしゃべりしているお客さんたちは気にしていません。会合が四日続いていた私は無性に早く帰りたくなりました。そうだ、次のサンダーバードに乗ろう。特急料金も惜しくない。まもなく、富山行きのサンダーバードがやってきました。自由席にも余裕があります。やれやれ、武生か鯖江のどっちかには止まるやろ。あと十数分で…そこで車掌さんのアナウンス「次は福井、福井です…」!!恥ずかしながら、妻に出した携帯メール〔えらいこっちゃ 福井までとまらん 迎えこれるかな〕打ち終えたら、すでに北陸トンネルの中。メールが届いた時点で妻は武生駅で待っていました。30分かけて福井駅まで迎えに来てくれたものの、「もう、90分も貴重な時間を無駄にした…」ず~っとブツブツ…不機嫌そのもの。助手席が針のむしろです。早くおうちに、着かないかなぁ…。

幼いころから電車が大好きで、学生時代も時刻表を手放さなかった私。魔が差したというか、老化現象というか、大失敗でした。要するにみなさん、電車の旅にはドキドキ、ハラハラがつきもの。ちょっとお出かけ、お子さんと、小さな冒険してみませんか。

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