最高のソース

小学校一年生のとき、千葉の幕張にある叔母の家にいきました。いまでは幕張メッセやマリンスタジアムがあり、オシャレなウォーターフロントになっていますが、当時は遠浅の砂浜で、叔母の家から歩いて潮干狩りにいけました。バケツを持ってテクテク、テクテク…「海、どこ?」父は「すぐそこだ」というものですから、本当にすぐそこだと思っていたら、なかなか着きません。「まだ?」と何度も聞きながら、1時間以上歩いた気がします。

海岸には夏でなくても茶店がありました。お客として座っていたおばちゃん二人が「あらまあ、かわいい坊やね」と言ったかどうか、これ、食べなさい、と、おもむろに茶色くて丸くてつややかなものを口に入れてくれました。口の中いっぱいにトロンとひろがる甘いような、しょっぱいような…。すきっ腹にストンと入って、おいしい~。生まれてはじめて食べたあの味、今でもはっきり覚えています。でも、晩ご飯に食べたであろうアサリ?ハマグリ?は全然、覚えていないんです。「茶色い丸い食べ物」の正体が分かるのはずっとすっと後のこと。みたらし団子、大好きです。

味真野には三つの谷がありますが、文室は南東の谷の一番奥。保育園からは3キロ半ほどあります。すみれ、ひまわり組の子たちと一緒に歩きました。足がだるくなってきた頃、山のふもとにお寺の屋根が見えてきました。最初の目的地は子安観音(正高寺)さんです。やった~、ついた~。一斉に参道の坂を駆け上がっていきます。どこにそんなエネルギーが…。ご住職がニコニコ笑顔で出迎えてくださいました。本堂ではお母さんが命がけでみんなを産んでくれたお話を伺いました。

さらに上にある五皇神社にお参りして、帰途についたときには11時を過ぎていました。晩秋を迎えた山々は紅葉がはじまっているのですが、みんなはおしゃべりに夢中。道路の側溝には水が勢いよく流れています。葉っぱを落として競争をはじめました。フタがあるところ、ないところ、「トンネル」を出たり入ったりするたびに順位が変わります。これはめちゃくちゃおもしろい…でも、気をとられていると…。ジョボッ!ほ~ら、ハマッた~!疲れて集中力が鈍ってきたのでしょう、結局、五人ぐらい?落ちたようです。

延々と続く田んぼの中の一本道。「お腹すいた~」「もうヘトヘト~」「も~う、まだまだやが~」文句がだんだん多くなってきました。けど、どうしようもない。みんなも歩いているし、自分も歩くしかないのです。これがお散歩のいいところ。

お腹ペッコペコで帰ってきたみんな、お昼のかき揚げは最高においしかったはずです。

「♪どうしてお腹がへるのかな…お腹と背中が、くっつくぞ!」って歌、覚えていますか。「おなかのへるうた」は昭和35年の作曲。暗くなるまで外で遊んで、顔も服もたくさん汚して、お腹を空かせて帰ってくる昭和の子たちが目に浮かびます。

空腹は最高のソース(調味料)という言葉もあります。たまには、みんなで声をそろえて「かあちゃん、お腹すいた~!」も、いいものです。

平成の子どもたち…我が家に友だちが来ても、たいていポテトチップを片手に個々にDSに熱中。これじゃ、あんまりお腹、空かないねえ。第一、うちに遊びに来ている意味って、あるの??

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