ボクは、男だ。

夕方、門の後ろに隠れて、テラスで遊ぶ子たちに向けて雪球を投げました。「!?」最初はどこから飛来するのか不思議そうにあたりを見回しているのですが、やがて私の姿を見つけます。「あ~!あそこ」「おーい、園長先生が投げてる」ぞろぞろと何人もテラスに出てきて口々に「ここまで投げてみろ」「こっちこっち」と挑発してきます。雪合戦歴12年、どんなに離れても当てる自信があります。子どもたちの球は、どうせ届かないだろう、と安心しきっていたら被弾しました。お、意外と飛ぶな。「ヘヘッ」得意げに笑っているのは、すみれ組の子たちでした。

「かぜひいたらあかんで、みんな、中に入ろう~」【発表会に風邪で休んだらどうするんですか、もう、園長先生!】とでも言いたげな、すみれ組の担任の声です。発表会の前だからこそ、こういうことも必要なんだヨ、と思いつつも、ヒヤヒヤしている先生の気持ちもわかります。決着は後日ということで…。

私たちが園児の頃の発表会は、真っ白にお化粧されて、白いタイツ姿で、お母さんたちが丹精こめて作った衣装を着て、音楽に合わせて「かわいらしく」踊っていました。「なんでこんな格好しなあかんの…」四歳児の心に、小さな男のプライドが芽生えたのでした。

今の生活発表会は一年間の遊びの集大成。これまで楽しんできた遊びのイメージを膨らませて、自分のやりたいことを堂々と自信をもってやる…はずですが、大勢のお客さんを前に、固まってしまう子もいれば、ふだんの遊び以上に自己発揮する子もいます。どんな結果になっても、かわいくて楽しいです。きっと、みんなが力いっぱい表現しているからですね。そして、発表をみている観客のみなさんの尊いお顔。親やジジ、ババにしてもらった喜びにあふれていて、まるでホトケサマのようです。

生活発表会が終わっても相変わらずの雪模様。なかなかガンコな冬将軍ですね。出先から帰ってきたら子どもたちが「雪合戦しよ~」そらきた、やるぞ~!園長の雪球の威力を知っているすみれ組の男の子は遠くから慎重に攻撃してきますが、ひまわり組の男の子たちは大勢で至近距離から投げてきます。これはたまらん。眼鏡の裏まで雪まみれになってしまいました。これでは反撃もできず、なすがまま。どうにか少し距離をとり、子どもたちの背中や足に強めの球を当てているうち、バシッ!一番挑戦的だった男の子の顔に命中してしまいました。

しまった!泣くかな…。狙っていなくても、当たるときには当るのです。雪球で年に一人や二人は必ず泣かせてしまいます。痛いんだよね。小さな頃、私も父の雪球の直撃を何度も受けています。痛いやら冷たいやら悔しいやら、涙が止まらないのです。
顔を手で覆いながら、無言で立ち去った彼…気にしながら戦いを続けていたら、その子が現れました。雪のかたまりを両手で持っています。不適な笑みを浮かべています。きっと、泣きそうになったのを物陰でグッとこらえてから、復活してきたのでしょう。よっしゃ、それでこそ男や!うれしくなって近寄った瞬間…ブワッ!やられた~。

ボクは男だ!自信に満ちた表情は、彼のパパとの顔と重なってみえました。

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