秋の夜に染みる涙の…
おかげさまで、創立70周年記念式典が厳粛かつ和やかな雰囲気の中、お天気に恵まれ、無事に終わりました。たくさんの方からご寄付をいただいて、念願だった園歌ができました。ありがとうございました。歌碑はふたば山の後ろにあります。
69年前の7月に本山の中に二葉幼稚園ができました。創設者は私の祖父です。部下には厳しい人だったようですが、大の子ども好きで、衣をまとったまま、子どもたちと相撲をとったりしたそうです。私もいつも膝に入っていた記憶があります。了寛さんを心から尊敬していて、俳句をたくさん残しています。
「日向ぼこ おじいちゃんここ いっしょして」
祖父に可愛がってもらったこと、父にたくさん遊んでもらったこと、兄弟でよく遊んだこと…これらの経験がみんな、園長であり、父親である今の私に生きているのだと思います。70年の節目を期により一層、私も保育園も研鑽していかなければなりません。どんな時も「和顔愛語」【やわらかな笑顔とやさしい言葉】を忘れることなく-。
朝夕は冷え込むようになり、晩酌が楽しみです。「ちょっと熱燗にして」「はい、熱燗ね!」子どもたちがレンジで温めてきてくれます。ところが、晩秋の我が家にはこの後、酔いが吹き飛ぶ日課が待っているのです。一月のかるた大会に向けて、子供会の百人一首の練習が始まったのです。去年は週一回で効果があがらなかったから、今年から週二回だそうです。もちろん、家では毎日特訓です。秋の深まりとともに、妻のピリピリも増していくのです。
「何回やったら覚えるの」「覚える気がないからでしょ!」
ぐずぐず、いやいや練習している次男に、妻の大きな鋭い声が浴びせられます。
体の小さな三年坊主は「大人の不条理な企て」に疑問を差し挟む暇もなく、「なんで、もう…」あとは涙で言葉にならず、一枚、また一枚と遅々としたペースで枚数を増やしています。
「おいおい、勉強じゃないんやから、もう、いいやろ。今日は。5枚覚えれば十分や…。」と私。キッ! 睨まれました。おっと、こっちに火の粉が飛んできそうです。涙の跡が残る顔を洗ってやり、二階の寝室に「避難」します。おやおや、階下では一年生の三男の練習がはじまりました。何枚覚えたら恐竜キングをさせてあげる…あの手この手で百人一首の世界に誘っています。ママがやさしいのは最初だけだぞ…。
かつてわが町内は常勝チームでした。全盛期メンバーである六年生の女の子が二人残る四年前、長男は一年生。彼と同級生の二人は強烈な負けず嫌いで、泣いても泣いても特訓についてきて、百首を完璧に覚えました。六年生二人、二年生一人と一年生二人。敵陣に果敢に飛び込んでいく一年生たちに会場がどよめいたものです。栄光のチームの名を汚してはなるものか、毎年、「子どものため」といいながら、母親たちの闘志は加熱する一方です。
次男は自分の世界に没頭するのは得意ですが、人と競うのは嫌いです。それでも、何枚かでも札が取れたときは得意な顔を見せます。練習はいやだけど、喜びもわかってきたようです。何事にも功罪両面があるもの。今しばらくは様子をみましょう。妻にとって、どことなく協力的でない夫はイライラする存在かも知れません。そして次男には辛い思いをしても、なかなか助けてくれない父親は頼りない存在かも知れません。要は「ほどほど」に。私はそれでいいと思っています。
でも、やっぱり見ているのはつらいです。お母さんの趣味!?につきあってくれて、ありがとう。次男坊。「ひとりじゃない、どんな時も…」「泣きたい時も、そばにいるから…」秋の夜に、園歌が身にしみるなぁ。