小さな研究者たち
ドラグーン、ドランザー、ドラシェール… 「ベイブレード」の名前です。ベイブレードは昨年、テレビアニメで登場して以来、小学生の男の子を中心にブームになっている一種のコマです。
色んなパーツを組み合わせることで強くすることができます。おもちゃ会社がテレビアニメでブームを仕掛けているのがミエミエで、好きになれなかったのですが、晩秋にはついにウチの子にまで及びました。慣れた手つきでガチャガチャとパーツを組み合わせて、友だちと「ゴー、シュート!」とか言って勝負している姿はすっかり少年。たくましくなったな…。と思う反面、やっぱりテレビにやられたか…という悔しさがありました。
ある日、園児が広告の紙で「剣つくって!」と言ってきました。器用なほうではないのすが、がんばって巻きました。けれども、もっと細い剣がいい、といいます。できあがると、「巻いて!」「もっときつく」わけがわからないうちに巻いていくと「あ!!!」あのコマだ!
年末から、にわかに流行し始めた「手製べイブレード」は、すみれ組の男の子が発明しました。紙を細い筒(いわゆる剣)にして固く巻き、セロテープで固定して、マジックで好みの色にペインティングしてできあがり。ひまわり組やちゅうりっぷ組の「弟分」に贈呈する子がいて、園全体に拡がっています。
すみれ組では着々と「ベイブレード」の改善がすすみました。最初は紙を巻いただけでしたが、まもなく中心を指で押して円錐状にして軸をつくりました。まさにコマの形ですね。次はセロテープを丸めて玉をつくって芯にしました。そして、誰かがお散歩で拾ったBB弾を芯にすることを発見。さらに今年に入って爪楊枝を芯にする子がでてきました。回し方も発展します。最初は両手で回していましたが、親指と中指、人差し指をバネのようにしならせて、器用に回す子がでてきました。
小さなコマは「ブーーン」と唸りをあげてまわります。迫力があります。
「どれ、園長先生もやってみよう、貸して」両手で、エイ!コロコロ…。全然ダメです。こんなはずでは…。「んっ、できんのけ?」「……。」
買ってきたホンモノのベイブレードの出番は明らかに減り、大抵、おもちゃ箱の底にあります。
一方、手作りのブレードはお友だちと盛んにやりとりしているらしく、ビニール袋に何個も入っています。もちろん、一つとして同じものはありません。個性や癖がわかっていて、「これがいいよ」と、「初心者向き」を選んで貸してくれます。
誰が指示したわけでなく、誰から教わるわけでなく、自分たちで競い、工夫や改善を重ねていく。これこそほんとうの遊び。いわばみんなが小さな研究者です。子どもたちの創造力はすごい。さらに、それが二葉の保育の締めくくり、すみれ組から発信されたことを喜んでいます。