浜の真砂は尽きるとも
日野川の河川敷で「防火のひろば」に参加して、子どもたちと消防装備を興味深く見学しました。福井地震並みの震度7が体験できる起震車に乗せていただき、「おもっしぇ~!」と大喜び。バスを待つ間、しばし河原で石拾いをしました。探せばヘンテコな石があるものです。タマゴ、タイコ、ハサミ!みんなの想像力もフル活動。各自がお気に入りを持ち帰ることになりました。「これ、もって帰ってもいい?」と男の子が聞いてきました。手には五センチ角ぐらいの建築廃材。小さなタイルが貼られています。民家のお風呂(トイレ?)の一部でしょうか。最近の住宅では小さなタイルはめったに使いません。手間も費用もかかるし掃除も面倒ですから。この子がなぜ持ち帰りたいのかは分かりませんが、出会いのようなものが感じられ、「いいよ」と言いました。
昔、うちの母屋は五右衛門風呂でした。保育園のころは兄弟で楽しく入っていましたが、大泥棒の石川五右衛門が釜茹になった話を聞き、足元で火が燃えていると知って、そ~っと板に乗って入るのが怖くなりました。今、残っていれば子どもたちが喜んだでしょうね。ある日、その釜が取り除かれました。最新式のお風呂に改修するのです。職人さんがくわえタバコで鼻歌交じりにコテを巧みに操り、色とりどりの小さなタイルを次々と貼っていきます。その手際の鮮やかなこと。そして楽しげなこと。時を忘れて見入っていた記憶があります。
広い河原で、たまたま男の子に拾われたタイルのかけらにも、職人魂がこもっているような気がしたのです。おもちゃの感謝祭と同じ気持ちですね。
男の子はバスの手前で担任に止められています。私はヘンテコ石以上に価値があると思ったんですけどねぇ…。「だって園長先生がいいってゆったもん!」おお。言ってる言ってる。
週末はすみれ組の親子で冠山に行きました。下は晴れていたのに、峠に近づくころには曇ってきました。まるで季節の境界線にいるようです。
駐車場から山頂付近まで片道約1時間半の尾根歩き。黙々と歩く子、お母さんと楽しくおしゃべりしながら、ブヅブツ文句をいいながら、登り方に個性はありましたが、全員、歩き通しました。こんなに粘り強いなんて…と、わが子を見直したお父さんもありました。
「やったー、着いた~」という感激も一瞬のこと。風が強くて寒~い!紅葉を楽しむ余裕はありませんでした。おにぎりを食べて早々に下山。来年はもっと早い時期にしましょう。
帰りに大きなザックを背負った本格装備の人たちとすれ違いました。「上でお泊りですか?今夜あたり雪が降るかもしれませんよ」「だといいけどねっ」耐寒訓練でしょうか。かと思うと、「こんにちは~」と、カーディガンを着てハンドバッグを提げて、まるでお散歩のように、のどかなご婦人たちにも会います。ここは不思議なところです。
峠に戻るとお父さんたちがお湯を沸かして、あったかいココアをいれていました。見ているだけでも暖まります。振り返ると山頂は雲の中。あのご婦人たち、大丈夫だったでしょうか?
ゆっくり温泉に浸かろうと、帰ってすぐに息子たちを連れて「湯楽里」に行きました。コラ~ッ!ここはプールじゃない! まったく、子どもは疲れる暇もなく遊びます。余計、疲れました。
五右衛門は煮えたぎる釜の中で「石川や 浜の真砂は 尽きるとも 世に盗人の 種は尽きまじ」と詠んだとか…。
では私も…《日野川や 岸の真砂は 尽きるとも 子に戯れの 種は尽きまじ!!》