夢のミヤマ

この時期は夕方からの日野山登山もありです。荒谷町の日野神社からヒグラシの蝉時雨に包まれながら、杉木立の道を進みます。急坂を登り、尾根に出ると涼しい風。ここから岩場になります。おや?石の上にちょこんと佇むクワガタ虫。ノコギリ?いやいや、これはミヤマっ!どうみてもミヤマ。ミヤマクワガタ!

ミヤマは「深山」と書きます。山奥のクワガタです。けっして玄関前に落ちていたりしません。天然のミヤマのレア度は格別。子どものころ、私がついに捕まえることができなかった、夢のミヤマなのです。入れ物はペットボトルホルダーしかなくて、しっかり抑えて、ときどき中を確認しながら、転ばないように、慎重に持ち帰りました。

鹿皮のようなシブイこげ茶色、大きく鋭いアゴ。独特の頭の出っ張り。どこから見てもスキがない戦闘的スタイルに惚れ惚れします。でも意外とデリケートで短命。それがまた魅力です。

次男とはよく、虫取りにいきました。越前の里からはじまって、三国の森まで、いろんな場所に。
たいてい夜明け前、4時ぐらいです。古いクヌギの木を…蹴ります!思いっきり。二度めは相手が警戒して幹にしがみつくので、効果が半減します。不意打ちの、一回勝負が基本です。カブトが落ちたらボトッ…って音がします。「やったな!」最初はめんどうに思っていた私も、いつしか一緒に夢中になっていました。次はどこいこうか?って。

苦労しても全く成果がない日もあり、ひょっこり大物に出くわす日もあり、ムシとりには「狩り」に似た醍醐味があります。男の子の遺伝子が惹かれるわけです。

日野山の麓に小さなため池があって、竜神堂(りゅうじんどう)という小さな祠(ほこら)があります。そこでカブトやクワガタがよく採れました。当時の子どもたちは「ジュウジンドー」と呼んで「昔、お百姓さんが水争いで死んだ場所」で、たたりが…とか言い合っていました。デタラメです。6年生たちが「狩場」を独占するため、噂を流したのでしょう。友だちとビビリながら池のほとりの木に登って、ノコギリをゲットしたのを覚えています。

何十年ぶりに現場に行ってみました。「天保の飢饉のときに雨乞いをしたら夜叉が池の竜神が…」と説明が書いてありました。祠のまわりは整備されていましたが、周囲は相変わらず鬱蒼とした森で、昆虫もいっぱいいそうです。

この夏、次男のムシ好きが再発しました。もう学生なのに、せっせとスペシャルな昆虫マットを捏ねて、数十匹の幼虫を愛おしそうに育てています。ブツブツ話しかけています。おまえ、だいじょうぶか?

南の海に台風がウロウロしているせいで、梅雨明けはまだのようですが、今週はお天気マークが並んでいます。獲物はミツワやコメリじゃなくて、森にいます。この夏、親子で狩りにでかけてはいかがですか。夢のミヤマ、いるかもしれませんよ。

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