子は宝

9月4日は長男の誕生日。13歳になります。平成8年の9月3日、保育園にいた私は、これから産みます…と連絡を受け、妻が入院している大津の病院に向かいました。病室にいったのは午後5時すぎ、すでに妻は分娩室に行ったあとでした。

「お父さん、こちらでお待ちください」お父さん…お父さんって、オレ?お父さんか…分娩室の前の丸イスに座ってワクワクドキドキ…テレビドラマなら、そろそろ「おぎゃー」と聞こえてくる頃なのですが、一向に変化がありません。一時間、二時間、三時間…難産なのか。お義母さんも心配そうです。看護士さんは「お母さんもお子さんもがんばってますからね」がんばってる?なにを、どう…?動きがあったのは午前二時すぎ。急に出入りが慌しくなって、分娩室の扉が開きました。保育器に入った赤ちゃんが目の前を通過します。えっ?今のがわが子…見たのは一瞬でしたが、真っ赤な顔で、泣き声ひとつ聞こえませんでした。

あたりがすっかり明るくなったころ、私一人、先生に呼ばれました。胎便吸引といって、赤ちゃんが産道から出られなくて、胎便や羊水をいっしょに吸い込んでしまったのです。肺が膨らんだ「わが子」のレントゲン写真。当直が小児科の女性のお医者さんで、適切な処置をしていただきましたが、厳しい状況には変わりありません。説明を聞いて、立ち上がると、脚がガクガク震えて力が入りません。なんで、こんなことに…大きな病院。診察室から病室までの廊下が果てしなく長く、横の手すりにつかまりながら、よろよろ歩いたことを、覚えています。

誕生日のたびに「お前は死にかかって出てきたんだからな、どれだけ心配したか」言う私に「もう、やめてよ」息子はいいます。これだけは言い続けるつもりです。お母さんを絶望の淵から救ったのは、NICUにいたお前の虫笑いだったんだよ…。

子どもがいることは当たり前のことではありません。おなかを痛めたお母さんなら、おわかりですね。一方で、お父さんは一日にしてならず…だと思います。かく言う私も、こんな経験をしておきながら、長男のときは子育てはまだまだ一歩引いていたかもしれません。次男、三男が生まれ育つなかで、私も子育ての最前線に立った…というか立たざるを得なくなったのでしょう。気がついたら、お父さんになっていました。お父さんを、お父さんに導いていく…男性園長の大切な役割の一つだと思っています。

銀(しろがね)も 金(くがね)も玉も 何せむに まされる宝(たから)子に しかめやも

金も銀も、宝石も、子どもに勝る宝はない…万葉集にある山上憶良の歌です。
男は仕事、女は育児…古くからの伝統だと思ったら、さにあらん。富国強兵と高度経済成長がそういう分業を作り上げてきたことがわかります。もちろん、お父さんは授乳することはできませんが、子どもの徳育に関しては昔から、最大の責任を負ってきたのです。

目の前で泣いたり笑ったりしている子どもは、かけがえのない宝です。確かに、親子は生涯親子なのですが、素直に子どもと心を通わせるのは十年ちょっと。今をおいてありません。秋がきて、忙しくなりそうですが、夜も長くなります。どうか、家族の時間を大切にしてください。

毫摂寺の縁日である「大寄り」がいつごらから始まったのかはわかりませんが、この近辺では数少ないお祭りらしいお祭りとして知られています。今年はお天気が心配でしたが、最期までもってくれました。

かわいい浴衣姿の女の子、甚兵衛姿の凛々しい男の子たちが、裸電球に照らされるスマートボールの台に吸い寄せられるように集まっています。わが子(下の小学生二人)も例外ではありません。あかんなー、はいらんなー。ここを狙うんや…コトン!真ん中の「優勝」と書いたポケットに入りました。「やったー!すごいぞ優勝や!」「はい、ボク、後ろのおもちゃ一つとってって~」後ろって、これ?ゴムひもの弓とか?これは二葉の夕涼み会ではハズレの残念賞ですよ。なーんだ、といいながらもダーツや射的…次なるゲームへと流れていくのです。高いのはわかっていても、「お祭り」では千円札に羽根が生えるものです。

歩いて一分としないうちに知っている人、懐かしい人と出会います。みなさん、家族連れのリラックスした姿です。ここで交わす一言二言がとても温かく感じます。金曜日ということもあって、踊りが終わってもまだ大勢の人が行きかっていました。行く夏を惜しむように、夏休みの終りを惜しむように…。

さあ、新学期、心を切り替えて、子どもといっしょにがんばりましょう。それにしても「大寄り」、夏の終りの、まさに絶妙のタイミングにあると思いませんか。

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