きまぐれな「台風」

暑さは記憶の色も濃くするのでしょうか。私の幼い夏の思い出は、今でも強いカラーを放っています。ノコギリクワガタのつややかな黒、プールの水色、浜辺に打ちつける白い波、そして線香の煙のグレー…。

学生の頃から憧れていた屋久島の山に、どうしても登りたかったのです。これまで遠かったのですが、今では世界自然遺産に登録され、大阪から飛行機で一時間ちょっと。行けるときに行かないと、春先から妻にもナイショでひそかに決意を固め、毎週のように日野山に登ってトレーニングを続けてきました。

中学生の次男とふたりで民宿に泊まり、二日間、屋久島の山を歩きました。もののけ姫の舞台のモデルとなった苔むす森や太鼓岩、屋久島の山々を一望できる黒味岳。日頃運動している息子でも甘くなかった、というぐらい、体力を使いましたが、珍しい好天に恵まれ、ガイドさんから自然の素晴らしさを教えていただいて、とても充実した旅行でした。丸い形の屋久島は、海からいきなり千メートルの山が立ち上がり、その奥、島の中央にはさらに高い神さまの山々が鎮座しています。樹齢数千年にもなる屋久杉の巨木が有名です。倒れた木の上に種が落ち、また新しい木が生えている「倒木上更新」も至るところに見られます。親は朽ちても子を育て、子は大きくなっても親を忘れず…。人の生き方にも通じる、自然の業(わざ)に驚くばかりです。

台風の通り道でもある屋久島。人には迷惑な台風も、屋久島の森を維持するために必要な存在だそうです。台風で古い枝は地上に落ち、老木は倒れます。それが木の寿命。そこから、また次の命が生まれる…台風が来ないと楽だけど、来ないのもよくない…。福井では雪が同じような感覚ですね。

というわけで、最近、体力を盛り返してきた(ぞ、と思い込んでいる)園長、帰りの会が終わるや子供たちに囲まれ、木登りの木になったり、遊園地の乗り物になったり、ゴーカイジャーの敵になったり…。たまには未満児さんと遊ばないと…バランスを考え、さくら組やさくらんぼ組の未満児さんにも「出張」します。

さくらんぼ組に入ったら、さっそく1歳児が寄ってきました。持ち上げたり、コチョコチョしたり、大喜び。「キャー、キャー!」駆け回ってテンション↑↑。ん?先生たち、なんとなくシラ~っとしています。 (低い声で)「また着替えなあかんのやで」「もう着替えないよ」「赤ちゃんがいるで、走らんの」テンション↓↓どうやら、1歳児に言っているのではなくて、(もう、帰る用意をしていたのに…汗だくになったじゃないですか、もう着替え、ないんですよ、どうするんですか~園長先生!)、先生の心の叫びだったのですね。…ちょっと反省。でも、行けるときに行く、が私のスタンスなので、園長のきまぐれ「台風」、また上陸しますよ。ゴメンネ。

「宿題終わるまで大寄りにいったらだめ!」親に言われて、腰を半分浮かせながら夏休みの宿題をやっつけた経験、ありませんか。ご本山の大寄りは、地域きっての大きな縁日。今年も大勢の人で賑わいました。

子供のお目当ては屋台のゲーム。いい賞品なんて当たりっこないのに、そこは雰囲気、財布の紐をゆるめてしまいます。ピークの時間帯は境内や門前が新宿駅前みたいな混雑。知っている人同士、あちこちで立ち止まって挨拶を交わす姿がみられます。毎日会っている同僚、一年ぶりに会う先輩、何十年ぶりに会う同級生…「おう」「久しぶりや」「元気やった?」。毎年、ここに人が大勢集まるのは、人と人の繋がり、ご縁を確かめ、暖めあうため、なのかも知れませんね。

明るく賑やかな境内から一歩、脇道に入ると人通りもまばら。こおろぎ、きりぎりす…盛んに虫の声が。流れてくる「やんしき」の唄が重なって、夏休みも終わりか…おとなの私も、ちょっぴり寂しくなりました。

今朝は園庭に赤とんぼが飛び交っています。さあ、実りの秋、おいしいものをいっぱい食べて、動きましょう。一ヶ月したら、運動会です。

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