今でしょ
「今できることは、今やるもんだ。明日には明日、やることがある…」
山形のおじいちゃんが小学生だった私に教えてくれた言葉。少々せっかちでしたが、背筋がビンと伸びた、おじいちゃん。その言葉が根っこに染みているらしく…
「後でするから、そのまま置いといて」と言われても、台所に洗い物があると、すぐに洗いたくなります。結婚以来、17年間ずっと。先日も、妻が買い物に出かけているうちに片付けようと…。茶碗を洗って、箸を洗って、野菜を切ったスライサーも、スポンジでこすって…。アッ!親指! シマッタ!血!うわ~っ、絶対やった!見たくないけど…とりあえず指を洗って…血が止まらない、痛っ~。おそるおそる見ると、深さは1ミリか2ミリぐらい、爪もナナメに削れて、結構な面積のお肉がスライス…血がタラ~リ。落ち着け、ここは落ち着いて、指の付け根を押さえて腕を上げて…。
帰ってきた妻は夫の情けない姿に、「いらんことをするからよぉ」絆創膏をキツ~く巻いてもらいました。ズキズキとしつこく痛みます。何日たっても、字を書く、落ちたものを拾う、服のボタンを留める、何気ない動作のたびにギャ!と激痛。普段、意識していない右手の親指ですが、いろんな動作のカナメになっているのですね。
「えええっ!」すみれ組の山登り。カレンちゃんは思わず絶望?の声を上げました。見上げれば、山頂に向かって延々と一直線に続く山道…「いくぞ」パパはやさしく手をひいて、娘の気持ちも引っ張ります。結構な坂を登っても、鬼ケ岳には最後に真っ直ぐなきつい登山道が待ち受けているのです。保育園で鬼ケ岳に登るのは12年ぶり。高さもほどほど、山頂からの眺めも良くて、中高年の皆さんに人気の里山です。
「おかあさん、ボクに力を、ちょうだい…」くじけそうになるとお母さんに抱きしめてもらい、再び登りはじめるショウちゃん。先頭を行くのはテンションが高いアキトくん。休憩もそこそこに「おっしゃぁぁ!パパ!いこうか!」「おっ、い、いくんか…」お父さん、立派な息子についていくしかありません。みんながんばれ~!登山道に展開される親子の様々なドラマ、いいですね。
1時間から1時間半ぐらいで、みんなが次々と頂上に到着しました。「やったー!ついた~!」標高533メートル。宇宙まで見えそうな青い空に、お日様が朗らかに照っています。さわやかな空気、そしておにぎり。おいしいですね。
お金を払えば楽しませてくれる仕掛けのディズニーランドやUSJは人気ですが、自分たちで楽しみを創る、能動的なレジャーにいく人が減り続けています。でも、この爽快感!は、お金では買えません。
山頂広場にグダ~っと座り込んだお父さん、お母さん。子どもたちは「鬼ごっこしよっさ~!」鬼ケ岳で鬼ごっこが始まっちゃいました。さっきまでのシンドそうな表情は何だったの?驚異のエネルギー回復力です。みなさん、わが子の成長ぶり、たくましく思ったのではないでしょうか。同時に、わが身の衰えも実感かな?せめて小学校の間ぐらいはわが子に負けないよう、がんばりましょう。
今やることは、今やるものだ…それぞれの息子たちと山登りやスキー、親子マラソン…いろんな体験をしてきました。最近は次々と父親を追い越していく…それもまた、うれしいものです。
三週間がたって、親指の傷跡も小さくなり、痛みもほとんどなくなりました。親指は普段は意識しないけど大事なカナメ。私はわが家の親指、保育園の親指、お寺の親指…いろいろ考えるとタイヘンですが、とにかく身体は大切にしないと。さしあたり、スライサーには気をつけます。