ジケンでした

「ガンプラ」とよばれるプラモデルがあります。アニメのガンダムのプラモデルですが、もう26年の歴史があるロングセラーだそうです。三十代のお父さんには思い出があるのではないでしょうか。部品数はありますが、組み立ても容易で、説明書を見ればそれなりに戦闘ロボットが完成します。年代が違う私は興味がなかったのですが、次男がたまたま買ってきたガンプラがとんだ騒動を引き起こすことに…

「さわらないでっ!作るっ、作れる!」
細かな図がたくさん書いてある説明書を見て、小学二年生にはムリだと思ったのか、私の妹がてきぱきと作り始めました。「ヤメテ!もう、ボクが作る!」ものすごい剣幕で抵抗します。もう、小さくないんだ!彼にも、男のプライドがあるのでしょうか。作りかけのガンプラを箱ごともって障子を締め切り、説明書とにらめっこ。

二次元の図面を三次元に理解するのに相当苦労しながらも、「アシができた!」涙の跡がついた顔で、組み立てた脚を見せにきました。好きこそ物の上手なれ。以来、二個、三個…と経験して、色も塗りたいと言い出しました。勉強もこれぐらいしてくれたらいいのに…と思うぐらい夢中です。

勤労感謝の日の夜、妻の実家のおばあちゃんに新たなガンプラを二個も!買ってもらって意気揚々と帰ってきました。「今日はもう遅いから、明日作りなさいよ」「エ~ッ」「エ~じゃない!」と風呂に入った私。ほどなく、長男が「リョウが、頭から血を流してる!緊急事態や!」と呼びにきました。いったい何が起きたの、カッター?ハサミ?わけがわからないまま居間にいくと、次男は顔を血だらけにしてギャーギャー、妻は電話帳を見ながら病院に電話中…いきさつを聞くと、玄関から上がるなり、浮かれて走って敷居につまずき、居間の柱に頭を打ったようです。プロレスの「ジャンピング・ヘッドバット」ですね。なんで手をつかなかったって…大切なガンプラを持っていたからです。

タオルで抑えて出血は止まりました。長さ5センチほどパッカリ割れて頭の骨が見えています。最初にいった休日当番の病院ではアルバイトらしき若い当直医が動揺してしまい、看護師さんに脳外科の先生を何人も電話させています。「それより、早く処置…」とイライラしていると、中村病院が受け入れてくれることになりました。

中村病院に着くと、ほどなく白衣に袖を通しながら院長先生が入ってこられました。「あ、中村先生、夜遅くすみません」先生の顔を見て、正直、ホッとしました。彼もだいぶ落ち着きを取り戻しています。

「皮膚がきれいに割れているので頭はなんともないですよ。念のため、観察していてください」 「ええっ、注射するのぉ~、縫うのぉ…。縫うのはいいけど、注射だけはしないで…」「それだけ元気あれば大丈夫や、注射はするぞ、しないと、もっと痛い。今度から気をつけるんやぞ」きれいに5針、縫っていただきました。

彼にとって、天国と地獄をいっぺんに経験したような一日でした。額の向かい傷は、ほろ苦い記憶とともに残るでしょう。次の日、学校では同級生に囲まれ「ヅガイコツが見えてたんやで」と、ちょっと英雄気取りだったようです。がんばったから、サンタさんはガンプラを持ってきてくれるそうですよ。小学生にも来るのかな?

なんで休日の夜に限って…子どもは怪我や病気をするのでしょう。大声で泣かれると焦ります。小児救急は福井の当番病院まで行くことになっているものの、越前市には小学生以下の子どもが8千人以上。市内のお医者さんの善意に頼る小児医療体制で十分だといえるのでしょうか。

暖かい日が続いたためか、紅葉も遅めで、本山の境内は先週が盛りでした。保育園の子たちも錦のじゅうたんを敷きつめたようなお庭で遊びました。「きれい~」と女の子たちは色とりどりの葉っぱを袋に集めます。ある男の子は羅漢さん(お釈迦様の弟子)の石像の前に座ってニコニコ。「このおじいちゃん、ボクと一緒や」何が?「はな水…」鼻の下に二つの白いシミが…。そして男の子にも線路…笑顔までそっくりでした。羅漢さんも、かわいいお友だちができて嬉しかったのでは…。

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