聞こえます?つつく音。

秋空の下、連日、ちいさなチャレンジが続いています。わが園の運動会はわりとクラシカル。竹馬、平均台、鉄棒…失敗しても、よ~し、今度こそ!何度も練習して、できるようになる。まるで階段をひとつひとつ、上がっていくようですが、決して上の階にいくことが目的ではありません。運動会は、「できた」「できる」ことより、それまでのプロセスが大切。どうか、親子いっしょに歩んでください。

禅の言葉で、「そっ啄(たく)同(どう)時(じ)」といいます。「そつ」は燕など鳥のヒナが卵の殻を内側からつついて破ろうとすること、「啄」は外側から親鳥が殻をつついて助けてあげること-。
※「そつ」は口偏に「卒」です。

親は子の「そつ」の音を聞き逃さずに、いいタイミングで援助してあげれば、子どもは自然に成長します。子どもが伸びたいときに、親には「そつ」の音が聞こえなかったり、反対に、「そつ」がないのに、親の身勝手で急ぎ「啄」しても、表面的にはともかく、本当の成長はありません。日ごろから、子どもの心をしっかり受け止めていれば、「そつ」の音も聞こえるはずですね。

刈っても刈っても伸びていた園庭の芝生も、黄色みがかってきました。草木も、しんなりとしてきたようです。お彼岸の中日(春分・秋分の日)は年に二回、昼と夜の時間が一緒になる日ですが、自然界の陽と陰の転機でもあります。枯葉、秋雨、刈田…なんとなく寂しげな秋。木々が葉を枯らし、落とすのは、次なる春に向けてエネルギーを蓄え、芽を出す準備にかかるために他なりません。人の老いもまた然り。自然に無意味なことは何一つないのです。

乗り心地のいい太いお腹、ぶら下がっても平気な筋肉モリモリの腕。怒ると家が震えるほどの大声で、私の体を軽々と持ち上げ、オシリをぺんぺんした父…今では骨の形がわかるほど、すっかり細く、背中も丸く、小さくなりました。「細くなったねえ…」と言うと、「ははは。全部やったからな」子どもたちに栄養をやったから、だそうです。昔は「食べるものに困ったら、いくらでもこのお腹の贅肉をやるから…」と冗談を言っていましたが、どうも、私が一番、もらったみたいですね。

老いた父はさながら、色とりどりの葉を落とす晩秋の大きな楓のようです。前ばっかり見ている親から、ちょっと離れた立場で、目に入れても痛くないぐらい可愛い孫たちの「心」を育ててくれています。親が「陽」なら、「陰」の働きですね。これからも、孫が成長していく姿はもちろん、私たちが人として育っていく姿を見守ってほしいと思います。敬老の日、両親に孫たちの描いた絵にペアの鉢植えを添えて贈りました。

大きなお腹、腕の筋肉、子どもとよく遊び、よく叱る…今の私は昔の父とそっくり。父には子どもが3人でしたが、私には3人+92人います。腕が二本しかないのがもどかしいですが、これからも、たくさんの子を持ち上げ、ぶら下げたいと思います。

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