ななめ平均台!

ちりそめぬ閻浮壇金(えんぶだんごん)のはしらをば御堂に添へし銀杏なれども 晶子

しぐれ模様。時折のぞくお日さまに照らされ銀杏の葉が金色に輝きます。与謝野鉄幹・晶子夫妻が毫摂寺を訪れたのは88年前。大きな銀杏を「閻浮壇金」(インド伝説の砂金)の柱にたとえました。

オトナはちょっとだけ、気が重くなる時期ですが、子どもたちはそうでもありません。お気に入りの長靴でルンルンごきげんで登園。履きやすいし、最近はとてもカラフル。虹色模様の長靴もステキ。玄関前でお母さんと手をつないで歩くのはスロープと階段の間の幅十数センチほどのタイル貼りの仕切り部分。

このスロープ、最初はなかったのです。卒園児のパパママは覚えているかな。補助金をいただいてスロープを作ったのは二十年ほど前です。真ん中を平均台のように歩くことも想定して、職人さんにピンクのタイルを貼ってもらい、完成後に私が滑り止めの薬剤を塗りました。

予想は大当たり。子どもたちは好んで「斜め平均台」を歩きます。「なんでこんなとこあるくの…」と苦笑いのおばあちゃん。平らで広いところより、斜めで狭いほうがおもしろいに決まっています。子どもにとって、おもしろければそれが遊具なのです。

久しぶりのお天気。園庭のふたば山のてっぺんで三輪車(正確には四輪車)に乗る三歳児のスズちゃん。斜面を下る体制。そこに一歳児の弟、ソウちゃんがやってきました。三輪車に乗ったまま、弟を呼び寄せ、前に座って…と促すスズちゃん。おもしろいよ、いっしょに乗って坂を下りよう…ということですね。姉弟愛!ほぉ、どうするかな?私が注目したのは先生のほう。「のる?」ソウちゃんに確認した先生、後ろに回って三輪車のフレームをにぎりました。ダーッと下る三輪車と先生。ソウちゃん、顔が引きつったのは一瞬、すぐ、ニンマリ満面の笑顔。大満足のお姉ちゃん、弟の後頭部にお顔をすりすり、ふたりとも、幸せそう。「あぶないからだめ」で終わるところ、迷わずサポートに回った先生、かくれたファインプレーですね。

子どもは探求心、冒険心のカタマリ。おもしろい場所、事(こと)を見つけては、何度も何度も。小さな経験、小さな実験、小さなチャレンジを無数に積み重ねて、自分で学び、さまざまな力を身に着けていきます。ほら、たった二、三年でムテキの五歳児に。身体と頭脳をフル稼働、私と丁々発止、互角の鬼ごっこを繰り広げているのはご存知のとおり。大人が予測をたてて「見守る」ことと「転ばぬ先の杖」とは違うように思います。

境内に響く木槌の音。御堂前に雪割りを組み立てています。そろそろタイヤも替えないと。いよいよ冬の足音が迫ってきました。やっぱり気が重くなりそうですが、雪遊びとか鍋で熱燗とか、楽しいことを考えることにします。