桃李の苗
大きくなったら何になる?
丹南ケーブルテレビの「ことばのタイムカプセル」に、すみれ組のみんなが出演しました。わが園の子、かわいい!よそよりかわいい!いちばんかわいい!お花屋さん、ケーキやさん、作家、運転士、警察官…頼もしい。歯医者さん、学校の先生、保育士…はパパのお仕事ですね。「りっぱな僧になる」小学校の卒業式ですが、長男が書いていました。子どもが親の仕事に好印象をもっているのは、素直にうれしいものです。
夕方、園庭の隅にあるナツメ(棗)の木の周りに、子どもたちが群がっています。
お目当てはナツメの実。かじると青りんごみたいな味で、自分で採れる手軽なオヤツ。毎年、かなり枝打ちをしても、たくさんの実をつけます。秋の深まりとともに緑色から黄色、そして飴色に、甘みも増してきます。9月も下旬、運動会の頃になれば、手の届く範囲の実はすっかりなくなり、学童さんが木に登りはじめます。園児も見よう見まねで木登り。手を思いっきりのばして、大きな実を手に入れると「やった~!でっかいのゲットしたよ!」ナツメをポケットいっぱいに入れたおサルさん、得意満面です。
「桃李 もの言わざれど 下自ら蹊を成す」(桃李不言自下成蹊)
中国のことわざ。桃や李(スモモ)は何も言わないけれど、美しい花や実を慕って人が集まる、その下には自然に道ができる。魅力のある人のところには自然と人が集まることをいいます。俳優の松坂桃李さんは、ここからの名づけでしょう。「できる人」「すぐれた人」は確かにほめ言葉ですが、私はわが子たちにまずは「いい人」に育ってほしいと願いました。「桃李みたいな魅力的な人」です。
幼い子どもって、まるで福井の冬のお天気みたいに難しいです。ニコニコ笑顔、ギャギャー泣き顔、スヤスヤ寝顔。日々同じようなできごとの繰り返しは、ほとほと疲れます。いったいどうしたらいいの?自分も来た道なのはわかっていても、イライラしたり、悲しくなったりするものです。桃李の苗を育てていると思ってはいかが?いろんな経験とやさしい声掛けの積み重ねは、苗を育てる水やお日さまみたいなもの。気長につきあえば、だんだん幹が太くなるように、好きと嫌い、良いと悪い、両極端だった心の幅の、その中間が膨らんでいきます。「まあ、いいや。わかったよ、それもあるよね…」その膨らみこそ、人を許し、人を受け入れ、人を包み込むことができる魅力になっていくはずです。
居酒屋さん、パンやさん、散髪屋さん、お医者さん、校長先生…私には、いろんな同級生がいます。みんなすてきな大木です。園児たちが将来、どんな実がなる、どんな木になるのか、わかりませんが、保育園はお父さん、お母さんと一緒に、お子さんの幹を太くするお手伝いをします。だまっていても、人が集まるような、魅力がある木(人)に育ってほしいです。