辨える
「むらさきのお洋服きてたの園長先生やろ」本山の報恩講のお参りのあと、男の子が寄ってきました。「どうやってあの声出してたんや?」当然ながら御堂では門主として振る舞うわけです。変顔したり、おバカを言ったり、肩車してくれる園長先生とは別の私の姿がすごく印象的だったみたい。あくまで中身は園長先生なんですが―。
師走に入った日、すみれ組はおうちの方をお招きしてささやかなお茶会を開きました。お運びとお客さんという茶道のほんの入り口ですが、半年前からお稽古を重ねてきました。時雨模様で、たまに差し込む日差しにお庭の紅葉が鮮やかに映えます。
席入り。家族一組ずつお座敷に入ります。赤い毛氈に最初に座るのはお正客。緊張してる?パパさん、頼りは隣のわが子。(小声で)「ね、つぎ、どうするの?」「お先に、っていうの!ちがう!お指をこうして!」(連続ダメ出し、ママ、笑!)すっかり立場が逆転です。微笑ましくも、凛とした時間がはじまりました。
半年前には座ってじっとしていることすら難しかった子たち。正面を向き、背筋をのばして、小袱紗(こぶくさ)にお茶碗をのせてお運び。両手ついてきちんとお辞儀。かっこいい。走り回って私に飛びかかってくる普段のすみれ組さんとは思えない、素敵な姿を見せてくれました。
昔から「ハレ」と「ケ」といいます。「晴れ着」「晴れの舞台」とかいうときのハレ、非日常です。ケは日常。「ま、テキトーでいいんじゃね」とばかり、ハレとケの境目があいまいになっている世の中ですが、「ご本山の保育園」としては、お参りやお茶会を通して、幼いときから経験を重ねて「わきまえる」ことを身につけるのは大切だと考えています。単に「空気を読む」だと誤解されたりしますが、本来は「物事の違いを見分ける」「道理を理解する」「心得ている」という、とても自律的なことです。忙しい中、わが子に付き合ってこの場を作ってくださった保護者の皆さんにも感謝しています。
紙芝居作家の荒木文子先生!越前らくひょうしぎの会さんが、二葉に連れてきてくださいました。さすがは「ぶんちゃん」、自己紹介、手遊びから大ウケ。二歳児から小学生まで、夢中になりました。紙芝居は絵だけでなく、演者の話し方、絵の引き方、表情、身ぶりもいっしょに楽しむという、コンパクトでありながら、表現スケールが大きなお芝居です。楽しい時間、あっという間でした。荒木先生はまた来春、お仲間といっしょに本山に来てくださいます。ワクワクしますね。