この小さな命

 あと一年で定年や…やっと肩の荷が下りる、飲み会でしみじみと同級生が語ります。彼は大きな小学校の校長先生。教師は大変なお仕事。38年間、無事に勤めあげるだけでもたいしたものです。定年がない私はちょっと羨ましく感じました。

 夕方、玄関にお兄ちゃんのお迎えにきたママ。おくるみの赤ちゃんを抱っこしていて、たしか一か月検診が済んだばかり。初見参です。「わー、赤ちゃん、かわいいね~っ」のぞき込んだら、「園長先生、はい」って渡されました。一瞬、たじろいで… なにせ久しぶりです。赤ちゃん、しっとり重く、目はぱっちり、私を見つめています。この小さな命が、やがて歩いて、おしゃべりするようになり、お友だちと遊んで、ケンカもするようになる。園に勤めて28年。ひとりひとり、個性ゆたかな子どもたちが育つ姿を見守ってきました。責任は地球より重いお仕事ですが、喜びもまた、ひとしおなのです。

 二葉は、ちょっとしたおめでたブームの一年でした。過去最低の出生数と報じられたこの少子化の中で、ほんとうに尊いことです。命を産み育てる―。昔よりはるかに支援制度は充実したものの、命がけで産むのはお母さん、生まれるのは赤ちゃん。途方もない勇気と力を必要とする大事業です。パートナー、家族、友人、多くの支えがあってこそ。もう一人、家族が増えてもいいよね、と思える環境に、保育園が少しでも寄与できたとしたら、最高にうれしいです。「ひとりじゃない どんなときも」園歌にあるように、大人も、子どもも、一人にしない、一人にならない、大きなお家のような園でありたいと思っています。

 青空の下、本山の御堂の雪割りの解体作業です。けっきょく、気象庁が予想した通りの暖冬でした。いちばん積もったときでも本山の屋根雪は丘程度、園庭で雪だるまを見たのは一度だけ。大人はラクで助かった、子どもには物足りない冬でした。こんな年もあります。植え込みの雪吊りも外され、境内は春仕様。週末はタイヤ交換です。

 あと三週間、桜のつぼみが膨らむころには卒園式です。入園したころ、泣いてばかりいましたね。私の背中や肩に、何回乗ったことでしょう。つよく、やさしく、ちょっぴり生意気。立派に育ちました。ずっとこのまま居てほしいけど、巣立つときです。みんなに幸多かれ!心から願っています。