鴨 飛んできたよ
秋も深まりました。運動会から一ヶ月、いまだに園庭ではリレーのブーム。友だちと走るのが楽しいだけだった子が、だんだん勝負に目覚めてきて、白熱の展開になることも。どれ、私も…と混ぜてもらいました。半周遅れを取り戻そうとホンキを出したら、太ももがピキッて…妻が「準備運動なし?そらあかんわ―」
初冬になると 小学校から帰ってきた私に、母が「カモが飛んできたわよ」おどけて言ったものです。鴨は母の実家の山形・鶴岡のおじいちゃんが鉄砲で仕留めて、おばあちゃんがさばいたものを送ってくれたものでした。
母の里は昔のお殿様の家。長い釣り竿が廊下の天井に並んでいたし、ロッカーには猟銃、庭にはでっかい猟犬がいました。お寺と武家では全く違う環境が刺激的で、夏休み、特急白鳥号に乗って鶴岡にいくのは最大の楽しみでした。
祖父が刀の手入れをしていたのを見たことがあります。背筋を伸ばして時代劇みたいに刀をポンポンする姿、かっこよかったです。カメラと短歌は趣味というか プロ級で 写真集を二冊出し 短歌は宮中の歌会始に二度選ばれ 書は毅然かつ温和な風合い。寝る前は真向法という体操を欠かさず、めいっぱい開脚してアゴがつくまでペタンとなりました。飾らない人柄でお話がユニーク、地元では「殿はん」と親しまれていました。「死ぬまで生きる」がモットーでした。晩年近くはひ孫たちを見せにいけたのが、一番のおじいちゃん孝行だったかな。
さて、飛んで(送って)きた鴨はその晩、鴨汁になります。ガラでしっかり出汁をとって醤油味。具はネギと麩だけです。天然鴨の風味は合鴨の比ではありません。あぶらが層になるのでいつまでもアツアツ!舌をヤケドします。さらに気をつけないと、たまに散弾、三ミリぐらいの鉛玉が入っています。ガリッ!「あっ!弾だ」ペッ!って。寒い夜にいただいく鴨鍋は格別なのでした。
「憧」(あこがれ)という漢字は「童」(わらべ)の「心」と書きますね。祖父母の会で園児たちのおじいちゃん、おばあちゃんにお会いしました。目を細めて孫とのやりとりをほんとうに楽しんでおられました。目の前のことで忙しいお父さんお母さんより、少しゆとり―。ある意味、子どもに近い目線になれるのではないでしょうか。私は還暦ですが、いまでも祖父母にまつわる思い出は心の灯になっています。みなさん、健康に気を付けて これからもお孫さんの「憧れ」の人であげていてください。
息子たちの周囲には煙も立たず、まだ当分ジイジにはなれません。まあ、園では99人のジイジみたいなものですけどね。